旧作アーカイブ5(二〇一六年四月)/石村
て
菜の花の野を行きまどふ
私のまだ見ぬ あのひとは
今ごろ何をしてるかなあ
わた雲 むら雲 ちぎれ雲
どこへとさして ゆくのやら
私の はてない憧れも
あちこちで もう
新しいみどりが芽吹いてゐる
たれも知らない あはれを感じたまま
いくつの命が 去つただらう
おさない心は
いつまでも
青い空ばかり見上げてる
ああ きれいだなあ 空
このまま 体ごとすきとほつて
どこかにさらはれていきさうな
空に手を伸ばさう 何かに届くやうに
その何かが 何なのかを
きつと あなたたちは知つてゐた
もうゐない あなたたちに
私はいつまでも
[次のページ]
戻る 編 削 Point(17)