旧作アーカイブ5(二〇一六年四月)/石村
 
も 想ひを馳せる
見たばかりの夢を 思ひ出さうとするやうに

でもそれはいつも
零れていく砂

ああ それでも私は きいた気がする
風が運んできた かるく うす青い響き

その命たちが呟いた いくつもの言葉を


(二〇一六年四月十四日)




  ひとり


花の中で くらしてゐたら
いつのまにか 次の時代になつてゐた

外に出てみると
私の知つてゐたものたちは みな ゐなくなつてゐた

さみしかつた

さみしいので
また花の中にもどらうとおもつたら
もうしほれてゐた

さやうなら 長い間ありがたう

ひとりになつた
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