生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
 
何十万もするという。から、恐くて歯医者には行けない。……五年間の間、僕は指が震え続けていて、文字も書けず、ギターも弾けず、だからもう、ODとアルコールで感情を誤魔化すしかなく、友人が家に来たときも、そわそわと薬とアルコールを次々と口に運んでいたんだけど、友人はそんな僕を、軽蔑しなかった。一年に何度か、彼は思いついたように、僕の部屋を訪れた。僕は実は、もう「嬉しい」という感情が無く、ただそれを申し訳ないと思った。彼は普通に、いつも僕を心配してくれてはいるけれど、別にそれを表にも出さない口ぶりで、ぼそぼそと変わらず話し、僕からは殆ど何も話さず、お互いに黙りがちになることも多くて、でもそれを気まずいとは
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