生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
 
であっても、現実(?)であっても、別にどちらでもいいのだ。自分が苦しくなくなりさえすれば。祖母は真面目に闘っていた。僕は不安に彩られた世界の、この世ならざる感じを知っている。祖母はずっとそこにいたはずだ。今も、いるかもしれない。僕は祖母を気の毒に思う。大真面目に世界と闘っている人に対して、僕に出来ることは何ひとつ無い。祖母の世界を肯定しても、否定しても、祖母の世界観を補強することになるから。不安を和らげてあげることが少しでも出来ればよかったのだけど。僕が祖母の家に泊まったとき、それは十五年前のことなのだけど、初め祖母はたいそう喜んだ。「夢みたいだ」と言った。夜になると、祖母は「家と家の狭い隙間にス
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