生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
 
情を失う代わりに、異常に社会的な文脈に過敏になる感じが、とても辛い。

 こちらを向けて置かれたサングラスを恐いと思った。そして、それが恐くない人は、逆に何かが足りないのではないか、と思った。実に自然にそう感じるように思うからだ。僕は自分の服がださすぎるし、見た目も悪すぎて、外に出られなかった。必ず人に不快感を与えると思ったから。夏は、僕は自傷痕がひどくて半袖を着られないし、長袖を着ていたら、暑苦しく見えていけないと思った。外に出ると、看板がどれも悪趣味に思えた。それは人をだますために建てられている。そのことが無意識に表れている、と思った。「無意識に」というのはノイローゼのときにはよく思ってし
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