生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
起きている。起きているけれど眠っていて、近くで誰かが僕を見ている。悪意のある目ならまだ処しやすい。見られているというより、観察されているような感じ。カーテンの隙間やベッドの下から、宇宙人の黒目がちな眼でじっと見られている感じ。
鬱状態の方はほとんど身体的だった。老人が滑らかに動けなくなるのは、筋肉の問題というより、ドーパミン不足が原因であることが多いらしく、今では腰痛の老人に抗鬱剤が出されたりする。僕はあまりに疲れていて、座っていることも横になることも苦痛で、だから結局のところやっぱりお酒と薬だけで生きていて、ますます脳を悪くしていた。感じるのがとにかく嫌だった。悪いことしか感じないから。
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