生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
 
椅子から転げ落ちそうになった。
 いつも大体吐き気があった。椅子に座り続けることが出来なかった。平衡感覚が失われて、いつも身体が傾いているか、回っている感じがして、椅子の上でバランスを取れているのか分からなかった。横になっていると、眠る瞬間に意識が途切れるのが恐くて、だからいつもお酒と薬で気絶するように眠っていた。お酒と薬無しだと、眠りに入る瞬間に、何かとんでもないことが起こった気がして、声を上げて飛び起きてしまう。悪いことの方は、夢の奥へ消えていく。でも、ときどきは悪い夢の中で目覚めるときがあった。部屋の中にまざまざと人の気配を感じた。金縛りと同じだ。僕は起きていると思っている。そして実際起き
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