生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
で、ひとりだけ裸になって晒されているのと同じだった。
幻覚が起こらないときはひたすら自分を駄目だと思っていた。絵を見ると吐き気がした。ヘッドホンを付けると、周りの音が聞こえない、ということが恐く、内に閉じ籠もることが全然出来なかった。部屋にいると、ドアから誰かが入ってくる気が常にして、目を瞑っていると、いきなり殴られるような気がした。気配や音を感じるたびに、飛び上がるくらい驚いた。それなのに、本当に親がドアを開けると、僕は最初気付かなかった。数テンポ遅れて気付いて、そして、いつも息が止まるくらい驚いた。ヘッドホンを無理して付けているときは特に驚いて、ヘッドホンを毟り取って壁に投げつけたり、椅子
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