生きてきたこと:Part 2.1/由比良 倖
は駄目になった。何が変わった、というのでもないのだけど、僕はすっかり社会に取り入れられた、と思った。もうひとりじゃないんだ、と思った。それは、絶望だった。絶望は絶望で、絶望の中にも希望はある。絶望なりに、生きていくのだ。誰もが、もしかしたら多分、そうなのではないかと思った。僕は僕じゃなくなった。駄目になった僕は、それから彼女に引き摺られるようにして生きていた。実際、僕はひとりでは何一つしなかったので、彼女に物理的に引き摺られなければ、外出も出来なかった。彼女が段々、僕のことを疎ましく思っているのではないかと思ったけれど、僕はもう、誰の気持ちも分からなかった。彼女は、それとなく、別々にまた暮らした方
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)