音叉/ただのみきや
 
    夜を失い 脆く石化する幽霊たち


 青い夢のイソギンチャク
無数の白い手を振っている
すがるように 祈るように なにも
 つかめない 蛭子の手

一つの絶対の 仮定の座標へ
   小さな舟が旅立った 星々の 末席へ
     
闇の向こう幻の梯子を上る 靴音が響くと
青白い手たちは追いすがった
  それともただ惰性で揺れていたか


 レクイエム 雨は 目が失くした声
信号から滴った血が青く燃え上る

自死などなく誰もが死の卵として在り
糖衣に包まれた現実の苦さと効用に痺れながら
ひとつの破裂する謎々として
スズメよりも震えている
爽やかな朝
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