迷子/ああああ
いることに気づいた。晴れた日なら気づかなかっただろう、淡い光だった。ぼくは恐る恐るその敷石の隙間を覗き込んだ。敷石の下には明らかに空間があった。部屋だった。間違いなく部屋だった。ベッドには男の人がうずくまっていた。
男は刑務官の足音に気づくと立ち上がり部屋の中央に移動して正座した。「レクリエーションの時間です」と刑務官が言った。男がなにか一言だけしゃべると刑務官は折り畳まれていた板を広げた。碁盤だった。二人は碁を打ちはじめた。会話がないせいでとても楽しそうには見えない。ふと男の手が止まった。「三だってば、早く止めなさい」と刑務官が言った。男は掴み上げた碁盤で刑務官を殴りつけた。刑務官の口に
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