虫を飼う/田中修子
を打つ、この手
さわるな。
髪をつかんで引きずり回され耳をふさがれる。
穢れた。薔薇の塩風呂。さらに日本酒を入れて祓うか、なんだ、この、
なぜ、なぜ、くるのだ、ふれないでくれ、
つうっと太ももをつたうの赤いの、
ぼうとして血だまりをみる。親指をおしつけると、あたたかく いん となってからまる。
垂らされてきた蝋が滴って 落ちただけ だよ。
ひととしてあつかうな
おまえはひとではない ひとをものとしてあつかうのなら
せめてそのように外道の顔をしておくれ、ね、
ヒトガタ、
いっそのこと、なぜ連れて行ってくれないのかね、
淡い紫陽花の向こうに赤信号がまぶしく
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