たまです。/たま
 

「お名前は?」と野暮な男が聴く。
「たまです……。」と答える。

隣の町まで車で三十分ほどかかる。
雨が降り出した。
痛みの発生源は直径一センチ余りの部位だけど、その痛みが臀部に広がって、車の運転は苦痛としか言いようがない。
ジクジクと痛む。
目の前のワイパーの動きがその痛みをさらに助長する。信号で止まる度に尻を浮かせて痛みを放逐するが、そんなこと気休めに過ぎない。
やれやれ……。蒼いため息が出る。
たどり着いた医療センターは真新しくて立派な建物だった。
当たり前だけど、がら空きの駐車場にラパンを止めて、傘はささずに正面玄関に向かう。玄関の左手に守衛室があった。

「あ
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