火炎の花が空に/こたきひろし
あったが、二三台そこに車を停めてしまうと身動きできなくなるような狭さだった。
老夫婦は二階の道路側の部屋に棲んでいた。ベランダによく洗濯物が干されていて生活の匂いがしていた。が、その斜め下に棲んでいた中年の独身男性の方はいつも窓を閉めきっていて全く生活感が見えなかった。
実を言うとそのアパートの住人である老夫婦の奥さんは私の妻の従姉妹であった。訳あって一切の交流はなくなっていたが、奥さんは私たち夫婦の縁結びの人だった。
妻の両親が他界してからその夫婦とは疎遠になっていったが、ある事をきっかけに断絶した。
とは言え、アパートの前の道は私の通勤路だった。
毎朝毎夕、車で通る度に気になって
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