棺の部屋/ホロウ・シカエルボク
いの事柄は細やかすぎてほとんど気づかずにやり過ごしてしまう、指にはざらついた感触が残った、昨日そこで叩き潰した虫のせいだろう、街灯に近いこの窓にはたくさんの虫がやってくる、中にはどこからか部屋に侵入してくるものがいる、そいつらはだいたい窓のそばで叩き潰される、集まるときも逃げるときも、虫たちは光のさすところに寄って行けばなんとかなると思っている、そしてそれはたいていの人間たちも同じだ、シチュエーションというのはときに凄くわかりやすいものだから、窓を閉めてカーテンを引き、明かりをつける、カリプソのリズムで何度か瞬いて、部屋はようやく明るくなる、本棚が足りず、積み上げられたいくつもの本、隅に追いやられ
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