棺の部屋/ホロウ・シカエルボク
 
られたコンパクトディスク、まるで主を失ったみたいな焦燥に満ちた部屋、鎮魂曲を待っている、でもそこに至るまでにはもう少し出来事を積み上げることが出来るだろう、もう日没は過ぎただろうか、水溜りを跳ねるタイヤの音が断続的に聞こえる、車のハンドルを握る人間たちはどこか機械的に見える、今夜はどんな夢を見るだろうか、近頃はやけにくっきりとした夢を見る、魂はもう新しい住所を探し始めているのかもしれない、誰かが部屋をノックしている、親族のようになれなれしく、しつこい、誰かが訪ねてくる約束などない、セールスか、運命を魅力的な偶像に委ねた甘ったれの下らない話かもしれない、自分の中に神が居ないのなら首をくくればいい、ドアベルの電源は切ってある、開けて欲しければ手を痛めるしかない、おそらく余程の気まぐれがない限りドアは開かれることはないだろう、そうして夜はいつのまにか深くなり、棺の部屋はその時を待ちわびているだろう。


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