棺の部屋/ホロウ・シカエルボク
 
薬の臭いを嗅いだことすらない人間だけど、それはきっと似たような感じだろうと思った、地球の裏側の人間だって目と鼻と口の数は同じだろう、それぐらいには確かなことだった、ポップ・ソングやロックンロール、ホラームービーやアクションムービーが世界中に蔓延るのは、世界は退屈な舞台に過ぎないってみんな理解しているからだ、哲学や文学だってそうだ、もしもそこに描かれるものが初めから周囲に存在していたなら、芸術なんてどんな意味も持つことは出来なかっただろう、鏡に映る自分が自分のすべてではないと感じたとき、誰もがなにかを語ろうと試みるのだ、それは美しいことでもあるし、おぞましいことでもある、誰かの心を強く動かすというこ
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