熟れないトマト/こたきひろし
の内の一軒。古くてやたらに風通しのいい藁葺きの農家だった。
僅かな農地を耕し、現金収入の無いに等しい生活はほとんどが自給自足だった。
俺の家は八人家族だった。祖母と両親、そして五人の子供らがいた。
俺が生まれたのは千九百五十五年の二月だった。終戦から十年近くが立っていた。昭和三十年代、俺は子供だったが、俺の生家の周辺には東京から戦争疎開してきていた家族がまだいたのだ。
俺は五人の子供の末っ子だった。九馬君とは同い年だったから同じ年に小学校にあがった。
俺の記憶に誤りがなければ九馬君の家は疎開してきていた家だったと思う。
大家族が遠い親戚を頼り、土地を借りて掘っ立て小屋のような家を自力で
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