熟れないトマト/こたきひろし
力で作り身を寄せ合うように生活していた。
そんな現実が俺の子供時代にはあったのだ。
俺の家もたしかに貧しかったが、九馬君の所はレベルが一段も二段も上だった。
よくぞあの酷い時代を生き抜いていられたと、人間の生命力の強さに驚くばかりだ。
九馬君の家の庭に、我が家の畑には夏はトマトが実をつけたがいつも青い内に、紅く熟れて美味しくなる前にはもぎ取られてしまった。
トマトは仕方なく夕暮れの真っ赤な太陽の光に染め上げられて紅くなるしかなかった。
と、俺は記憶している。
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