熟れないトマト/こたきひろし
 
家が裕福ではないのに子供はたくさんいて、末っ子は九馬君だった。
人間の産んだ子供に九馬って何だろう。名前の付け方酷くないかって、俺でなくても誰でも疑問に思うだろうが、所詮他所の家の事だから耳慣れてしまえば気にもならなくなっていた。
周辺は山あいの辺鄙な場所だった。中央を県道が一本貫いていて、それを中心に半分に分けると縦条の狭い地形は上と下に呼び名が付けられていた。
下側の山肌に沿って小さな川の流れがあり、辺りの田んぼに水が引かれていた。
県道の両側にある畑と田んぼからはけして豊穣の匂いは感じられなかった。山側に沿って点在していた家のほとんどは貧困の様相をあらわにしていた。
俺の家もその内
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