冷たい七面鳥/ホロウ・シカエルボク
天井裏でカタカタと
緩んだ木枠を鳴らして遊んでいた子鼠は
俺の気配が突然消えたことに気づいて
なぜか声を潜めて親鼠を呼んだ
「それは現実じゃない」と親鼠は髭を揺らせて
「現実に在ったことではないがリアルなものだ」
「現実にはないがリアル」と子鼠は復唱した
「わからない」親鼠は頷いた
「私にも詳しいことはわからん」「だが人間にはそういうことがあるらしい」
「そうなんだ」子鼠は眉を潜めた
「人間っていちいちややこしいんだね」親鼠は微笑んだ
「ああ、でもそういう人間はごく一部だ」「そうなの?」
「そうだ、ほとんどの人間は我々と同じような毎日を生きているよ…食事をし、排泄し、繁殖を
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