旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)/石村
 


花束はいつまでも枯れずに そこにあつた

花束に心を向けることは いかにもたやすいことであつたので
さうしないためには 英雄的な苦心が必要だつた
人は必死だつた ありとあらゆる偽りを考え付き 実行し
複雑な上にも複雑な思想を築き上げ
何万巻もの書物をまとめたが
もちろんすべてが嘘だつたので 
彼らの心は 安らがなかつた

花束はいつまでも枯れずに そこにあつた

花束はいつでも そこにある
君が心を向けさえすれば いつでもそこから
色とりどりのいとほしさが薫り立ち 君の心をみたす
愛するひとを想ふとき 友のしあはせを願ふとき
君の心に いつはりがないとき
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