旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)/石村
 
― その笑顔の美しかつたこと!

花束はいつまでも 枯れることはなかつたが
命たちはやがて 人と呼ばれるやうになり
愚かにも 互ひを傷付け 自らを憐れみ 蔑み 貶め
犯した罪にふさはしい 非道な獣にならうと決めた
もちろんそれは嘘だつたので 彼らの心は安らがなかつた

花束はいつまでも枯れずに そこにあつた

人はなほも むなしい努力を続けた 
たれもがみな 非道な獣であることが いかに正しいかを示すために
互ひに非道な行ひを 重ね続けた
互ひを憎み 恨み 傷付け 責め苛み
何万年も同じことを繰り返したが
もちろんすべてが嘘だつたので 
彼らの心は 安らがなかつた
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