旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)/石村
 
雨に濡れた亡骸を見た その悲しみを

妖精は丘の外れで いつまでも泣き暮らした

季節は幾度となくめぐり それでも妖精は泣き暮らし
いつしかその姿は淡くなり ―― 薄れゆき ――
―― 丘々を吹き渡る小さな風となり ――

麗かな春の日に
あの人のために野花を摘んでゐた
少女の頬に そつと触れた

少女は 知らなかつた なぜ自分が泣いてゐるのかを  


(二〇一五年十二月二十日)




  花束


遥かな、遥かなむかし
時がうまれて間もない頃

夢見がちなひとりの天使が
まだ小さかつた宇宙のかたすみに
いつまでも枯れることのな
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