旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)/石村
ない。)}
菫(すみれ)
やさしい人たちから遠く離れて
忘却の季節を通り抜けて
ひややかな秋の角笛に心ざわめかせながら
胸に深くつき刺さる微かな痛みだけを
なぜか大切にもち歩いてきた
黄昏時の懐かしい路地裏で
捨てられた昔の時計が今も時を刻む
神々の幼な子たちが告げる一瞬の永遠は
貧しい心にはすみ切つたかなしみの形でしか響きはしない
悲しいことばかりだつた
どこにも正しい言葉はなかつた
惨めな魂にばかり遭ひ
その誰よりも僕が惨めだつた
美しかつた神殿が崩れ落ちた時
たれもがそれを悲しんだ
いつかその人々も去り
そ
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