書かれた−祖父/非在の虹
 

無様に大きい。

子供は祖父の死後 
数年を経て生まれた。
しかし子供の記憶には
形の整わない祖父がいる。

子供は生きている祖父を見たことがない。
しかし子供は覚えている。
祖父はいつも戸口に立ち
表の通りを通るすべての者に
呼びかけていた。
(例えそれが人間でなくとも)
死んでいるにも関わらず。

(すでに死んでいる者の発言は優先される
しかし
死んでしまったものは 仕方がない
生きている家族達に従う)

子供は祖父を見た事はないから
日本刀を抜いて祖母を切りつけた事も
「女をこしらえて」一か月以上帰って来なかった
事も許せるのだ。
(祖母
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