書かれた−祖父/非在の虹
 
祖母も許していたが)

薄い髭
白髪の混じった
短く刈り込んだ髪。
彼の子供らは相似形の孫を
次から次へと産み落とす。
薄い髭と白髪の混じった短く刈り込んだ髪の
孫達。

祖父は爪先を上げず摺足で近づく
あるいは両手を付いて這って来る

墓に立ち
墓を建て
柿の木に登り
柿の木を降り
人々に向かって叫ぶ。

祖父の大好きな墓。
墓のために家族を作り。
墓のために家族を殺す。

祖父がごちゃごちゃした物置の埃の中から
少しずつ姿を現す。
祖父は踊っているようだ。
真剣に、かと思うとおどけて
剣舞だろうか。

  *

明るい外光へ向かって舞いつつゆく
子供には目もくれず
日の光を浴びながら
夏霧のように消えてゆく
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