Sestina/ふるる
 
言い訳もできないのだが
皆口をつぐみ彼のことを考えないようにした

三日が過ぎてしまい
光雄の帰りを待つ宏子は同じことを聞くが
もう何の言い訳もできないのだった
皆口をつぐみ彼のことを考えないようにした
彼の変わり果てた姿には施しようのない欠落
確かに山からは降りてこられたが

確かに山からは降りてこられたが
光雄は静かに怒りを込めて人々を見た
正確には見たのではなかったが
そして宏子の姿は瞳に映らなかった
光雄と宏子の関係を断ち切ったのだ
それぞれの罪を断罪する誰かが

皆はしばしの平穏に安堵を隠しきれず笑い
思い思いのやり方で山を降りた
光雄は宏子を忘れて
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