最後の一羽/やまうちあつし
類であった。繁殖期は年に一度で、一回の産卵数は一個のみ。そのため、いったん大きく減った個体数を回復することは困難であった。保護された個体はまもなく全て死に絶え、名実ともにこの雛が、世界で唯一のリョコウバトとなった。
最後の一羽は、マーサと名付けられた。
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マーサは動物園の檻の中で三〇年を過ごした
餌に困らず適度な運動をし穏やかな毎日だった
飼育係は献身的にマーサの世話をした
それは職務上の責任からだけでなく
地上にわずか残された
リョコウバトへの愛惜によるものだった
いや、たとえそれが
最後の一羽でなかったとしても
彼の愛着は
何ら変わらな
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