最後の一羽/やまうちあつし
獲を始めた。この結果、二〇万羽が殺され、四万羽が傷ついた。ヒナも殺されるか放置されるかという状態だったため、生き残ったリョコウバトは五〇〇〇羽前後と推定された。一九〇〇年三月二四日に少年によって撃ち落とされた一羽が、野生におけるリョコウバト最後の個体であった。撃ち落とされたリョコウバトは、その日の晩の食卓に上った。
それよりも少し前、とある動物園でリョコウバトの雛が一羽孵化していた。残り少なくなっていた野生の群れの一部を保護していたもののうち、二羽が繁殖に成功したのであった。人間の飼育下で生まれた初めての、そして最後の雛であった。リョコウバトはそのかつての個体数とは裏腹に、繁殖力の弱い鳥類で
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