窓が開かれる/葉leaf
 
いうことに私の胸は高鳴った。これはおよそ美しさというものへの開眼だったように思う。
 私の文学への開眼のきっかけとなったのは梶井基次郎の諸作品である。梶井の文章は自然や心理の微妙なところに分け入り、細かな表現がいちいち戦慄をもたらした。私は梶井の小説を詩として受容していたことになる。私は当時高校生であり、いまだ人生という大局的な視点を持つには幼すぎた。小説の全体を感じ取ったうえでの感銘というものはまだ私には早かった。私は梶井によって詩に開眼したといってよかろう。
 梶井のたった一冊の本により、私の前には広大な窓が開かれた。その窓の先には文学という豊饒な世界が広がっていた。それから私は三島由紀夫
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