十四年ぶりの熊本城/朝焼彩茜色
 
さん染まっている


懐かしさに耽っていると 石の蹴る音がして
思い出の引き出しがパタンと閉じた

前を歩いている夫が次男を たかいたかいってしている
きゃっきゃ きゃっきゃ 幸せな声がする
私の手を振りほどいて長男が走り出す
「ぼくもー」


お城のこの場所はとても心地の良い風の生まれる
泉のようだった 冬の草木は大地の源で翡翠の命が
その季節を待っているのが 透けて見えた

地震の爪跡も忘れてー


夜になると月明かりと貴方の色で空が
むらさき色のグラデーションを組み
貴方の黒が映えていた

痛々しい その姿

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