十四年ぶりの熊本城/朝焼彩茜色
さん染まっている
懐かしさに耽っていると 石の蹴る音がして
思い出の引き出しがパタンと閉じた
前を歩いている夫が次男を たかいたかいってしている
きゃっきゃ きゃっきゃ 幸せな声がする
私の手を振りほどいて長男が走り出す
「ぼくもー」
お城のこの場所はとても心地の良い風の生まれる
泉のようだった 冬の草木は大地の源で翡翠の命が
その季節を待っているのが 透けて見えた
地震の爪跡も忘れてー
夜になると月明かりと貴方の色で空が
むらさき色のグラデーションを組み
貴方の黒が映えていた
痛々しい その姿
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)