一匹の、鬼の世界に、降る雪は/秋葉竹
 
を殺す切っ先なんだ

苛立ちだけをあたしの胸に
残して何処へ消えたのか
悲しみ蒸留する酒みたいな
透明な切り傷、残して去った

鬼というなら
心が欲しい。



ふるくて白い
雪の道
歩く心をもてあそぶ
微笑み欠片もない世界。

苦悩にまみれた心の棘を
ふり払い立つ傘の中には
あたしと舞う風、咽び泣く
ただ声さえも、凍りつく
悲しみ色も純白だから
どうにも見分けがつかないんだ

なにもできない事実の果てに
心臓をえぐりとられた孤独の鬼は
ながく楽しませてくれて錆びている
風吹く公園のブランコの横で
揺れつづける運命の鎖を
えんえんとえんえん
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