肉体のサイレン/ホロウ・シカエルボク
引き寄せようとしていた、でも俺はそれにずっと気付くことが出来なかった、神経が切断されている、意思は、命令は、すでにどこにも伝達されない、まるで夢を見ているようだ、と俺は思う、違う、この光景ではなく、自分がまだどこにでも行けた頃のすべてが誰かの退屈凌ぎの落書きみたいなものだったように思える、それはもうすでにこの俺のすべてが清算されてしまったということなのかもしれない、俺にはもう現実は必要ないのだ、天井の色が変わり始める、様々な顔が見える、幼いころに数度会っただけの、もういまは居ないはずの人間の顔が見える、知らない顔も居る、とても古めかしい髪の編み方をした…、そうか、そうか、俺は笑いだす、俺は知らなか
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