肉体のサイレン/ホロウ・シカエルボク
 
くことは出来るだろうか?(俺はそんな感触を知らないけれど)、両腕はどうにか持ち上げることが出来たけれど、指先は動かなかった、そうだな、と俺は納得する、もっといろいろなものを抱きしめておくべきだったのだろう、その知り方を、確かめ方を、俺はあまりにも知らな過ぎた、お前は笑っている、萎びた俺の内臓を戦利品のようにぶら下げて…ああ、あの血だまり、あれは俺の人生のすべてだ、どす黒く汚れた血液の結晶、どんづまり…トッカータが聞こえる、トッカータが聞こえる、どうしてそんなものが聞こえるのか分からない、ただそれはあまりにもマッチしている、だから俺はいらだつことが出来ない、指先は意思とは裏腹にまだなにかを身体に引き
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