肉体のサイレン/ホロウ・シカエルボク
 
しない、ただそこには必ず理由があるのだよと言いたげな笑みを静かに浮かべているだけだ、かまわない、と俺は答える、どうせもう知る必要もない、本当のことを知る瞬間はいつだって手遅れだ、そうだろう?なにもかもが終わりだと知ってしまうまで本当のことは分からない、だから俺たちはこの身体にギリギリまでしがみつくしかない、そうだろ?やり直すチャンスなんていつだってあったことはないんだ、まずまずだったか、しくじったか、俺たちに知ることが出来るのはいつだってそんなことだけさ、冷たさはとっくに冬のそれを超えている、生命に訪れる最後の冬だ、俺はそれを抱きしめようと試みる、まだ両腕は動くだろうか、子を抱くようにそれを抱くこ
[次のページ]
戻る   Point(2)