在るの根っこ言葉の根っこ(改訂の改訂)/ひだかたけし
記憶の砂漠を
じゃあららら
六歳年上の兄は
四歳の弟にとって
優しくも絶対的な
父であり先導者で
薄暗い森を
下草掻き分け進む兄の背を
必死に追い掛けながら
この森は兄ちゃんの森だと
弟は誇らしげに思っていた
舞い舞い舞い
渇き渇き渇き
刻む刻む刻む
記憶の砂漠を
さらさらさら
兄はふっと
一本の大木の前に立ち止まる
[いいか、たけし、
あの節くれ立った処に大量の樹液が出て
奴らはみんなあそこに集まってるんだ]
兄はそう言いながら左足裏で
大木の幹を
物凄い勢いで蹴り始める
何度も何度も蹴り続ける
舞
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