浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける/ホロウ・シカエルボク
「聞かれたから答えたんだ」女も笑った―それきり俺たちはなんの言葉も交わさなかった、気が合わないわけではなかった、そのまま話続ければ、すこし楽しくなることだって出来たかもしれない、でも俺たちはそれを望まなかった、たぶん女も知っていたのだ、チャンネルを変えても手触りは変らないってことに…女は食器用洗剤みたいな色のカクテルを二杯飲んですぐに帰った、じゃあね、と言って軽く手を振ってから―もしかしたら本当にジョーゼットだったのかもしれなかった、こんな店で見るにはあまりにポエティックな仕草だったから…何杯目かを空にしてカウンターに両肘をついた、いつからここに居るのか思い出せなかった、でもきっと数時間のことに違
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