浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける/ホロウ・シカエルボク
 
に違いない、すぐに這い登れる落とし穴に落ちてぐずぐずしているような、そんな感じがした、あの女がまだ隣に座っていたなら、もしかした俺はそれについて話したかもしれない、そしたらあの女は俺がどんなふうに楽しくなかったのか、もう少し理解することが出来たかもしれない、そうしたらもしかしたら、正々堂々と着用されたバタフライ・パンツを目にすることも出来たかもしれない、でも俺の隣にはもう誰も座っては居なかったし、俺のグラスにはもうどんなものも注がれなかった、ルー・リードは相変わらず白い白いと歌い続けていたし、小さな窓の外には雨粒が蛙みたいに飛びついているのが見えた、俺は笑おうと思った、でもほんの少し前自分がどんなふうに笑ったのか、どうしても思い出すことが出来なかった。


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