浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける/ホロウ・シカエルボク
なんて―そんなふうに考えるのはまだこの世界になにかを期待しているのかもしれない、そしてそれは俺のなにがしかの努力とか、そんなものとはまるで関係のない期待に違いない、ふふふ、と俺は表情を失くしたまま笑う、隣に座っていた希望通りに生まれることが出来たジョーゼットみたいな女が、ボガートの時代の映画みたいな調子で笑いかけてくる、何か楽しいことでもあったのか、と…「なにも楽しいことなんかない、そんな時の方が笑っちゃう―そういうのって判る?」と俺は聞いてみた、女は唇をナメクジに変えようと目論んでいるかのように尖らせて考えた、「判らなくはないけどね」「そういうの黙ってた方がカッコいいと思うわ」俺は苦笑した、「聞
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