浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける/ホロウ・シカエルボク
もいるかのように時々痙攣する、右の時もあるし左の時もある、なにか判らないことが起こっているんだ、と感じる、そしてそれは、肉体における不可思議な出来事のほんの欠片でしかないのだと―なにを知っているのだというのだ?俺がこの身体について知っていることは、浴室で洗うことが出来る部分以上にはない、グラスには知らない間に同じものが注がれている、俺はそれを果たして注文したのだろうか?注文した記憶はない、少なくとも、かわりをくれと口に出した覚えはない、けれどもしかしたら、バーテンの顔を見ながらグラスを指さすようなことはしたかもしれない、でもはっきりとそうしたとは言えないし、いまがいったい何杯目なのかも覚えていない
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