御免よ、僕には気づいてあげることが出来なかった/ホロウ・シカエルボク
鳴だったんだ―クソッ、と僕は悪態をついて、飲んだばかりのコーヒーの缶を地面に叩きつけた、いまとなって考えれば、いろいろな可能性がそこには感じられた、たとえばこの近くに死に瀕している誰かが居て、気づいてもらいたくて必死に上げている声が、観念的に僕に届いた―そんなオカルティックな想像に浸ってしまうくらいに、瞬間的に僕は追い詰められた、なんとしても原因を究明しなければいけない気がした、図書館へ行って、新聞のバックナンバーの訃報欄を片っ端から読んでみたり、街中を歩いて道端に置かれている花束を探したりした、病院に勤めている知り合いに電話をかけて、近頃小さな悲鳴を上げながら死んだ患者が居ただろうか、なんてこと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)