ラスト・ワルツ(路上のソワレ)/ホロウ・シカエルボク
上半身だけの抜殻の側で、仰向けに横たわっていた、最期に生体であった時点で彼女は、心と身体のバランスを大きく欠いていた、だからきっと、そんなことになってしまったのだろう―そして彼女には、そのことがまだ理解出来ていなかった、午後の太陽は車体の隙間から彼女のことを照らしていた、肉体の方は車体の下にあったので、シャッター音とともに無数のライトやフラッシュが中途半端にその輪郭を映しだそうとしていた、その、乾いた音は鳴りやまなかった、それは、彼女の生涯において、もっとも彼女が注目された瞬間であった、けれどそれは、けっして彼女自身の実力や容姿のせいではなかったし、もちろん彼女にもそのことはよくわかっていた、いや
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