ちいさなちいさなことばたち 二/田中修子
 
色の風景のように

すぐそばにいさせてください。

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「金の王冠」

王に追われた道化が
身を投げた
翡翠のくらい、夜の海

うちあげられた
不思議の文字の浜で
ぐちゃぐちゃの体で
笑っていましたら
投げ銭くれるひとがいて

寂しかった
道化はいつのまやら

うす汚れた
冠かむった王様に
なってしまい

ありゃあ、もう、
何者でも、ありゃあ、せん。

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「秋のベンチ」

しいのみパラパラ
公園の
のざらしの
木目のベンチに
赤とんぼが二匹
座って おしゃべり
しているよ

秋ですね
秋ですよ

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