ロストの先端/ホロウ・シカエルボク
たしは不当にここに住んでいるのではない。これはわたしの両親がかつて経営していた店で、いまはわたしのものになっている。フランチャイズのではない、個人で細々とやっていた店舗だ。老朽化を理由に旧道が閉鎖され、すこし上に通ったバイパスが利用されるようになったため、店を開ける意味がなくなって閉められた。コンビニを閉めてからは、両親は趣味でやっていた野菜作りを商売として本格的に始め、コンビニをしていたころよりもいい収入を得るようになった。どこか土地を買って畑を広げようかという話をしていたころ、大地震によるバイパスの崩落に車ごと巻き込まれてふたりとも死んだ。葬式では棺の蓋が開けられることはなかった。わたしはそれ
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