空を飛ばない円盤/こたきひろし
正常な意識を取り戻した時
機体は攻撃目標の空から大きく外れてしまった
いつの間にか
月明かりに照らされた機影は大きな湖の上にあった
さなえは湖の近くに棲んでいた
棲む家には近年、他所の土地から嫁いできたが、夫は兵役に取られて南方の島に飛ばされてしまった
だが、大本営発表と異なり戦局は著しく悪化していた
既に本土の制空権は失われており、国家の敗戦は時間の問題であった
さなえは夫の両親に義弟を加えて四人でくらしていた
義弟は病弱が幸いして招集を免除されて家にいた。
だが周囲は、お国の役に立たない男として冷たい視線で捉えていた
義弟はその事から世間に引け目を強く感じている様
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