陽向臭い匂いと雨の匂い/こたきひろし
されたら次を探せばいいだろうが、と思った。
思いながら、簡単に再就職出来ない現実をよくよくわかっていた。
しかし
無責任と我が儘にも程があるだろう。嫁と幼い子供はどうするんだよ。と思った。
勝手に生きる事を放棄するなんて。それで済ませるつもりかよ。
何も解決しないじゃないか。
と
怒りを感じた。
同時に私は思い出してしまった。
あの日の事をあの病院の部屋を。
私の父親が臨終の間際に、兄貴が親に向かって吐いた言葉を。
ボケちまったお袋もいっしょに連れてけよ。あんたがさんざんな目に会わせたから、手に負えなくなっちまったのに違いないんだからよ。最後ぐらいは何とかしろよ。あっちに
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