やさしい世界の終はり方/石村
「でも、だいじな仕事ですから。今日出がけに、母もさう言つて見送つてくれました」
「さう……えらいわね。お母さまもあなたもえらいわ。ありがたう、ほんたうに、ありがたうね」
「どういたしまして。ぢや、私はこれで失礼します。あと十七分しかありませんから」
「さうね、さうね、少しでも早い方がいいわ」
「はい。では、失礼します。お目にかかれてよかつたです」
「ありがたうね、ほんたうに、ありがたうね。さやうなら、元気で――」
さと子さんは茶の間に戻り
あかるい窓際に置かれた遺影と骨箱に話しかけた。
「あなた、あと十七分で世界が終はるんですつて。
こんなことつて、あるのねえ。
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