渚にて/ホロウ・シカエルボク
のマンションなら上出来という感じの設備だ、洗面用具やシャンプー、石鹸なども見受けられたが、バスルームは見当たらなかった、それは海で澄ませていたのかもしれない―床には一応の細工がされていたようだったが、いまではほとんどもとの岩盤に戻っていて、そしてそれは少し濡れていた、以前はここには波が来ていなかったのかもしれない、地が沈んだのか、海面が上昇したのか、それは判りようもないが、とにかくそんな理由でここはフナムシに明け渡されたのだろう…まともな状態なら座り心地の良さそうな椅子がひとつあった、いまでは誰の体重も受けとめることは出来なさそうだった
ふいに部屋の中が暗くなった、まだ日が翳る時間じゃな
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