渚にて/ホロウ・シカエルボク
体液のように澱んでいた、無表情な殺戮みたいに海岸線を無数の車が行き来して、そのたびに空気からは綿埃のような臭いが漂った、散らかされたような鱗雲は空一面に広がり、その隙間隙間から待針のような陽射しが無邪気な鋭利を投げかけていた、人影はなく、あるいはどこか見えないところにあって、誰も居ない国に来てしまったかのような錯覚を覚えさせた、だけどもしかしたら、本当はそんな場所で生きることをどこかで臨んでいるのかもしれない、そんな閃きには抗いがたい真実の香りがした、どうしても受け入れきることが出来なかったのは、それだけではないこともまた真実だったからだ―矛盾を否定すると人間は人間ではなくなる、許容出来るすべての
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